Midnight-02

「ジョン…ジョン!」
「何だよシャーロック。」
「ああ、そこにいたのか。いいんだ、呼んでみただけだ。」
「ちょっ…そこにいたのかって、2時間前からいるだろ!それに呼んだだけって何だよ?真夜中にあんな大声、近所迷惑だぞ。」
「そんなに声が大きかったか? ちょっとうたた寝して夢を見ただけなんだが…。」
「それが僕の夢だってわけか。どんな夢?」
「聞かない方がいい。」
「この期に及んで、教えられないってか!」
「分かったよ。言っとくが聞きたがったのは君だ、ジョン。君が殺される夢だった…。」
「…本当か、確かに縁起でもないな。どんな風に?」
「聞かない方がいいって言ったろ。例のタクシー運転手の事件でだ。」
「ピンクの研究か。」
「まあな。運転手の持ってた銃が実は本物で、窓の外の君を見つけるんだ…。」
「そして僕が撃たれる?」
「…僕は何とか止めようとするけど、体が金縛りにあったみたいに動けない。そして銃声のあと、窓の外で倒れてる君を…。」
「ただの夢だよシャーロック。僕はここにいる。」
「そうだ、ただの夢なのに、何で僕は動揺してるんだ?」
「君が?動揺してるって?」
「…君が真夜中のプールで、僕のためにしてくれたことに比べたら…。僕は動けなかった…。」
「そういう夢だったからだろ、シャーロック。気にすることじゃない。」
「…そうかも知れないが…。」
「それなら、僕も一つ言ってみようか?」
「何を?」
「僕も見たことがあるんだよ、君が死んでしまう夢。」
「ほう、どんな?」
「さっき君も言ってた真夜中のプールでさ。あの一件は僕にとってもかなりのダメージだったから…。奴が僕を盾にした状況を変えようと、君が動いて周りにいた狙撃手にやられちまうんだ。君はプールに落ちて…。」
「…ジョン?」
「実は君には言ってなかったけど…あれ以来僕はずっと怖いんだ…。」
「ただの夢だろジョン、さっき君も言った通りさ。」
「けど僕の場合、夢で終わらないかも知れないって思うんだ。あんな風に僕が悪い奴に利用されたり盾にされたら、君は動きが取れなくなってしまうだろ?」
「それはまぁ…。今後も起こる可能性はあるかも知れないが…。」
「そこなんだよ。肝心な時に君のお荷物になるなんて…僕はそんなのまっぴらだ!」
「…だから君はあの時…身を挺してくれたのか…。だがあの一件は、僕の落ち度でもあるんだよジョン。君が狙われる可能性について、もっと前に気付くべきだった。」
「そりゃ、今から思えばって話だろ。事件が解決した直後なんだ、ちょっとぐらい油断があって当然さ、たとえ天才であってもね。今回は痛み分けって事で、休戦にしないかシャーロック?」
「それは構わないが…夢の話がいつからバトルになったんだ、ジョン?」


【終わり】